カナダでATになろう

このブログはカナダでCertified Athletic Therapist として働く者による留学情報を綴ったものです。

プロスポーツの怪我とメディア報道について思う。

どうも前田です。

2023年も半分が過ぎるまであと少しということで、早すぎて怖いです。チームとクリニック両方で働くということで、曜日感覚が薄れるような日々をシーズン中は送っていましたが、今はチームがプレイオフを逃しシーズン終了してゆっくりしてます。

悪意のあるナンバーの記事

そんなゆっくりとしていた中でとある記事を見て、少し驚きといら立ちを感じたので投稿しようかと。実はこの投稿は本来NHLのシーズン中に起きた似たようなことを元に数か月前に書き上げていたのですが、なんかATとしてこんなこと発信していいのかと気乗りしないので自分でお蔵入りにしてたのですが、そうも言ってられなくなったなと思いまして投稿することにしました。

 

WBCで戦線離脱した広島・栗林良吏が登録抹消に…その裏には大会中に起きた”ある事件”が…浮かび上がる侍ジャパンのトレーナー問題 - 侍ジャパン | プロ野球 - Number Web - ナンバー (bunshun.jp)

この記事によると、球団側が公式に抗議したのは事実。そして、このヘッドATCの方が普段はNPB球団では働かれていないのも事実のようです。そしてそのトリートメント方法が少しアグレッシブなところがあり、選手間でも有名と。。。

この代表チームという一時的な寄せ集めチームはATにとって難しいですね。選手の既往歴と受けてきているトリートメント、あとは痛みの閾値等色々知っておきたいことはあります。どうしても長く一緒にいるチーム所属のセラピストと比べるのは無理があるかと。

とりあえず今回のWBCの件の世間の反応が、自分が経験したことと関連していると思ったのでまずその内容をどうぞ。

プロスポーツとケガ

切っても切り離せないスポーツとケガ。どんな競技レベルにもケガは起こるものです。もう一度言います。どんな競技レベルでもケガは起こるものです。プロスポーツとアマチュアスポーツでのケガの違いは動くお金の規模ですかね。NHLのようなリーグでは年俸は数億円、そしてケガに対する保険金も桁がでかいです。

そして選手のケガについて常にメディアはアップデートを求めています。これは地域のスポーツ少年団の父兄が「たかしくん、足首どう?」というものと本質は変わらないのですが、メディアの場合はやけに詳細を求めてきます。

メディア

スキャンダルというか何かうまくいっていないことを描く時ほどメディアの筆は止まらないのだなとつくづく思いました。ケガに関しては正直メディアに公開している情報はかなりぼかしてあることがほとんどで、それはチームと選手個人の利益の為です。馬鹿正直にケガの内容を公開してもメディアやファンは勝手に騒げど誰も得しません。

こちらが提供した限定情報で勝手に推測ゲームを始めるのはどうぞご勝手にですが、リハビリの経過や結果について批評し始める内容を見るとうんざりします。SNSなどは医療知識豊富なのかわからない方々が、あれこれ持論を語りだし、リハビリ失敗だ!このチームのメディカルスタッフ全員解雇しろ!と好き勝手やってます。

なんでこのチームはここ数年こんなに○○のケガが多いんだ!

印象論に過ぎない。特に慢性的なものでない、コンタクトスポーツでのケガはぶっちゃけ完全な予防は不可能です。むしろ、「これで100%防げる」ものがあるなら教えて欲しい。NHLチームなら億は払いますよ。みんなプロスポーツの関係者はそれぞれ何かしら選手のリハビリや予防に有益になりそうな情報にはアンテナを張っていると思います。

けが予防のエクササイズはありますが、それはほとんどは慢性的なケガを防ぐもので、コンタクトスポーツでのケガを防ぐものではありません。それをなぜ、メディカルスタッフのせいにされるのか結構自分は謎に思ってます。自分もサークルスポーツで軽くケガするくせに、なんでより強度が激しいプロはケガを防ぐことが可能と思ってるのよ。

ケガの原因のメカニズムも十人十色です。バイメカ的な共通点はあっても、なんでこんな場面が起こるのよ?と首をかしげるような受傷機転は普通にあります。それを防ぐためには、まずなぜか二人の大男が後ろから全速力でタックルして、ちょうど足首が絶妙なアングルで芝に固定されて。。。みたいな状況を再現してそれに対しての予防練習でもするのかな?

ケガのメカニズムが常にメディカル的なものとは限りません。昨今のスポーツは大型化に加えて、あらゆるゲームスピードの高速化が進んでいて、状況判断する前に敵が目の前なんてこともよくあります。これらは運営するリーグが意図してエキサイトメントの為に起こしたことで、メディカルスタッフにはどうしようもありません。今のNHLを見てください。スピードがバカ早いです。ボードに捕まってタックルされようもんなら、コントロール不可能です。競技の高速化は間違いなく選手のケガの頻度を増やしています。

なんですぐに手術しないでリハビリして再発させたんだ!

大けが=手術とはなりません。特に世界のトップリーグとなれば、チーム専属のドクター達に加えて北米、もしくはヨーロッパ中の専門医に意見を求めたうえで、あらゆる選択肢を選手に提示したうえで、選手の尊重を確認します。もう一度言います、選手の意思尊重をします。なぜなら選手がこの意思決定の主役であり、選手は個人事業主なので彼らの決定が一番重要です。この作業に必要なのは選手が意思決定しやすくするための、医学的基礎教育を施して自分の体で今何が起こっているのかをきちんとコミュニケーションを取って、理解してもらうことです。最後に決めるのが選手である以上納得のいく決断となるようなサポートはしています。

カレンダー

プロのカレンダー管理は現実的です。今ここで手術したらシーズン大半棒に振るけど、あと2か月リハビリして復帰してみて、たとえ結果的に感覚がよくなくて即手術したとしても次のトレーニングキャンプには間に合う。MRIの結果的に組織にそこまでの損傷はないからこの決断は十分可能。。。というシナリオも考えられます。ベストではないけど、ベター。

常に理想的な状態で選手を競技に送り出すわけでもないという事実があります。ただ、そこにはプランBやCがあり、それを選手、コーチ、GMと合意をした上でやるので問題はなく、そこの調整がいわゆるヘッドATやディレクターの仕事かなと見てて思います。

これが元々の投稿の内容です。。。

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ヘッドトレーナーがATCである理由

事実の羅列を見るに、球団が正式に抗議したのであればおそらく本人に聞き込みした上での抗議なのでしょう。そしてこのATCアメリカのAT有資格者)の方はWBCの時は常に選出されており、その理由がWBCの主催はMLBであり、アメリカのATCによるMLB流での管理が保険等の関係で必要なのでしょう。選手にかかる保険であったり、ATCへの Malpractice Liability Insurance であったりと、書類関係で色んなルールがあるのは北米プロスポーツにいる自分としても推測できます。トレーナー選出プロセスについては知らないので何も言えません。でも、そりゃコネだよね。公募なわけない。そりゃそう。

この報道のやり方だと反論できないよね?

この報道を受けてほぼ特定されているヘッドATからしたら反論とかできなくないですか?反論の声明なり会見開けば晒されるし。単純に何があったのか両方の話聞くべきだと思うんですが。ただ、そうしても既に世間はトレーナー=悪となっている構図があるのは事実ですから、少しアンフェアかなと。なんで一方には取材しといて、もう一方にはしないのか。

なんで試合に起用したの?

様子見で一軍4試合は試しすぎのような。それとも選手が我慢して黙ってた?

JATOは守らないの?

これは日本にいるATCの方々に質問ですが、JATOは声明出さないんですか?記事の内容的に少しATCの印象悪くなるかもしれないし、他のスポーツトレーナーの人達が好き勝手言っているのをみると、渦中の方と連絡取って何かしらのポーズを取ってもいいかなと思うんですが。

結論

晒上げと誹謗中傷はやめましょう。そしてプロスポーツ選手の怪我は外が騒ごうが、中の人間はかなり考えて仕事してるので、ほっといた方がいい。普段は選手の怪我について語らないプロスポーツで今回のような情報の流し方には少し悪意があるので、それをまず分かってもらいたいです。ATする人は基本選手を助けたいと思いが強い人が多いと思うので、今回の件で好き勝手言われてるATの方はきっと自分で思うところあると思いますよ。

今回は2つの事象を混ぜたので読みにくいかもしれません。ごめんなさい。

ではでは。